氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

韓国料理店「オモニ」で孤独の…、じゃなく『1人プルコギ』

バットを立ててグリップに額を当て、そこを支点にグルグルと3回転もすればきっとその場でひっくり返り最悪、胃の中のものをぶちまけてしまう程に三半規管には自信がない。

 

要するに目まぐるしい毎日を送っていると言いたかったのだが、目まぐるしいはあくまでも「目が回る様だ」という意味なので実際に目が回っているわけではないから念の為。そんな中、すっかりと忘れてしまっていたのだが、先日「オモニ」という韓国料理屋のランチに娘たちと共に行ってきた。

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きっかけは、そこで働く男性スタッフが自分の職場に来店してくれたことだ。

 

駐車場に車をとめハッと気づく。

「あ、財布忘れた」

「なにやっとんの、もう!」

扶養家族の次女に散々罵倒される。そこへたまたまNが通りがかった。

「おい、食べに来てやったぞ。ただ、財布忘れた。PayPayって使える?」

「使えます」

ということで危うく昼食難民となるところをPayPayのお陰で助かった。

 

日曜日だったが曜日に関係なくランチメニューが頂ける。

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その中から選ぶことにした。

「プルコギってなに?」

「韓国風のすき焼きです」

『店長のオススメ』とあったので、それでは口車に乗ってみようとそれにした。

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実はその男性スタッフとは因縁がある。26~7年前のことだ。当時、自分は柳ヶ瀬で深夜2時まで営業しているレストラン&バーに勤めていた。その頃に、その職場にこの男性スタッフが入社してきて一緒に働くことになる。要するに彼とは旧知の仲だったわけだ。仮に名を「N」としよう。

 

店の閉店時刻が深夜2時にも関わらず、N はバスで通勤をしていた。帰りの足は当然ない。自転車も所持していなかったので歩いて帰ることを覚悟していた様子だ。ただ、自宅の方角が自分の帰宅途中だったので、見た目どころか心まで優しくて素敵でカッコいい自分が毎日送ってあげていた。これが女性スタッフならばアバンチュールな出来事もあったかと考えると少々、残念に思えて仕方がない。ただ、過ぎ去った昔の話だ。

 

仕事を納めた年末のこと、誰がお膳立てをしたか合コンの話が持ち上がった。男性陣は店の主だったスタッフ、女性陣は覚えちゃいないが多分、お客ではなかったか?ただ数合わせの為に自分も「嫌々」参加することになった。因みに最年長。本当に「嫌々」だった。途中、Nを拾ってから向かうことにする。

 

ところが約束の場所で約束の時間になろうともNが姿を見せない。携帯電話がある今ならばすぐさま電話をかけて確認が出来ただろうが、当時はまだ一部の者だけが所有出来た高級品だ。電話代も相当なものだったろう。結果、待ちぼうけを食らわされる羽目になる。招集の時刻にも当然、遅れて参加することになったのだが、元が「嫌々」だったので腹が立つことは微塵もなかったと記憶している。ただ、そのままNは姿を消してしまった。

 

30年近くの年月が過ぎようが、まだお互いに顔を覚えていることが取り敢えず凄いことだ。この間も紆余曲折はあったがこの業界に在籍し料理は続けていたということだ。ならば一度、行ってみようと思い立ったわけだ。

 

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〆はご飯を鍋にぶちこんで…



「初めて食べたけど中々美味いな」

ボリュームがあり過ぎて腹回りがキツかったがなんとか完食。娘たちも満足した様子だった。

 

「美味しかった。また来るゎ」

「ありがとうございます。僕もまた伺います」

在り来たりの挨拶で別れたが、まぁ元気にやっていたのであれば良かったとちゃう?



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