「極上焼肉丼のみ」@近江八幡「近江かね安」
近江といえば「近江牛」でしょ。ってことで、近江八幡ではプータローなのに贅沢にも「近江牛」をやっつけてきた。店の名は「近江かね安」という。
おいおい、営業する気があるのかよ、と思えるほどビジュアルは汚い。オマケにほぼ駐車場がない。駐車場としての仕切りが設けてないので、喧嘩上等と止めやすく出やすいスペースにどかんと止めてやった。
恐る恐る店内に入る。思った通りに貸し切りだ。
料理人というよりも、肉屋の店員といった出で立ちの店主が「いらっしゃいませ」とお出迎えしてくれた。
メニューは壁掛けのもののみ。価格設定と店のビジュアルに全くの一体感が感じられない。故にメニュー選びには相当な葛藤が余儀なくされる。
「焼肉丼1,300円」にしておくか。せっかくここまで来たんだ。「極上焼肉丼のみ」にするべきか。下に「極上焼肉丼定食」と書いてあるので、「のみ」は要らないんじゃないか?などと沈思黙考のち、ええい、ままよ!と「極上焼肉丼のみ」3,500円をオーダーした。
「はい」と奥に引き下がる店主。そして再び出てきた時にはバットの上に肉を乗せ、
「これからこれを焼きますね」
とわざわざ見せに来てくれた。
「おぉ~っ、これは凄いですね」
ここからが長い。ここが関西だからなのか、単に店主がお喋り好きなだけなのかはわからぬが、もう、喋る喋る、喋りたくる。まさに口から生まれた口だ。店主曰く。
「どこからいらした?岐阜県?岐阜県なら飛騨牛一頭買いってうたっとる店にこないだ行ってきたわ。で、戸籍簿を見せてくれって言ったら『なんです、それ?』って。あ、こりゃ、一頭買いしてないな、って直ぐにわかった。うちは一頭買いしとるからこうやって戸籍簿が出るんや」
とコピーしたものをくれた。
「近江牛はね、女の子は名前が平仮名で男の子は漢字にするんやわ。で、この子は『ほうらい』ちゃんね」
と牛肉を指差し説明してくれた。確かにそこには曽祖父までもがわかる様に記してある。話は枝肉から筋取りにまで及んだが、を全て活字にすると長くなるので割愛する。
料理が運ばれてきた。不思議なことに戸籍まで見せられると自ずと手を合わせたくなる
「いただきます」
いつもの如く細かな論評は避けるが、「確かに極上」の牛肉だった。丼としても絶品だった。元より肉そのものにボリュームがある。そこに白飯が、となれば途端に満腹となってしまった。
「うちの肉は柔らかいやろ?細かな筋まで全部とったるでね。歯の無い94歳のおばあちゃんが「ここの肉はやわらかいで私でも食べられるゎ。他所の店は硬くて歯が立たん」なんて言うもんやさかい、「あんた元々、歯ぁないやん」って言い返したったゎ」
とひとりで言ってひとりでウケていた。
丼に付いてきた温かい「たまご豆腐」も手作りだとか。これは中々イケるアイディアかも。
そして牛肉の下には粉末化されたピーナッツが敷かれていた。香ばしさの演出か?
近江八幡に行く機会があったらぜひ訪ねてみて欲しい。ただし、キタナシュランと親父のお喋りと駐車場の止めにくさを我慢することが条件となる。それさえ目を瞑れば「お値段以上」をこの自分が保証しよう。