なんかどこかで見たことあるぞ?
「これ預かってますよ。すっごい、可愛いの♡」
と女性スタッフから小袋を手渡された。小袋とはいえ、焼肉屋の「こぶくろ」でも無ければ歌い手の「コブクロ」でもない。前者は見ようによれば可愛いかも知れないが、後者はその欠片も見受けられない。文字通り小さな袋のことだ。
「なんだ、それ?」
さっそく袋を開けてみる。
「あら、やだ!可愛い~♡」
なんと!岐阜県は飛騨地方の二大アイドル、「さるぼぼ」ちゃんと「飛騨牛」ちゃんじゃないですか。
余談だが、飛騨牛は生きていれば「ひだうし」、肉になってからは「ひだぎゅう」と呼び名が変わる。ついでに国内でも最高級とされる神戸牛だが、神戸牛というブランドは存在しない。但馬牛の中でも特に上質なものが「神戸ビーフ」とブランド名で呼ばれることはイタリア系フランス人の自分でも知っていることだから、日本国民の君たちは当然、知っていることだろうと思う。
で、「さるぼぼ」ちゃんと「飛騨牛」ちゃんだ。生きてはいないが便宜上、「ひだうし」ちゃんとしておこう。飛騨食材の食品業者「山一商事」が駅前飲食繁華街にサテライトショップ「飛騨食材の店ヤマイチ」をオープンさせたことは以前にも紹介した。店長は既に岐阜市在住だが、本社が高山市にある限り足を運び機会もあるだろうということで、その時にこの2つがあれば買ってきてくれないかとお願いしてあったものだ。が、すっかりと忘れていた。
「なんか~、買ってあったみたいですけど、渡すをの忘れてたらしいですよ」
と再び女性スタッフが言う。
「なんだ、それ」
とはいえ、どっちもどっちやっちゅー話やがね。ただ、これで「つぶあん」ちゃんにも友達が出来て少しにぎやかになった。
そこでさっそく代金を支払いに、まだ開店前の店を訪ねたが、案の定まだ開店前だった。当たり前やがね。仕方がないので力ずくで自動ドアを開け店内に侵入。いち早く店長に見つかりお縄となった。
「ごめん、ありがとね。アレのお代を払いに来た」
「あー、はい。ちょっと待ってて下さい」
と奥へ引っ込みレシートを持って再び現れる。
「あれ、高山の『バロー』で売ってました」
「えっ?マジで?」
バローといえば中部圏では大手のスーパーマーケットだが、土産物屋でしか手に入らないと聞いていたものがスーパーに置いてあるとは、さすが観光地ならではの話だ。
「多分、土産物屋で買うよりは若干安いと思いますよ」
「そうか、ありがとう」
お礼といってはなんだが、以前にも頂戴した「鴻巣果樹園の樹上完熟リンゴ」をあるだけ買い占めさせて頂いた。とはいっても4個しかなかったけど。