氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

加齢なるバイク職人

「あれ?あれれ?なんか変だぞ」

深夜3時、愛車のカブリエーラちゃんで通勤途中のことだった。コーナーを回る度にハンドルが取られる気がした。いや、気の所為じゃない。その内に後輪がパコパコと音を立てだした。

 

「パンクやんけー!!」

自宅から既に3kmほど離れていた。職場まではその倍の距離を残している。とならば、いったん引き返すしかなさそうだ。外気温は恐らくだが、昨日時点での今季最低を記録していただろう。身を切る様な寒さに耐えながら、トボトボと自宅に出戻ると、車に乗り換え再び仕事に向かった。

 

さてどうしたものかと思案する。

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先ず自分の頭の中ではパンクをすることが想定されていない。ネットで見ると、自分で修理をする動画なども出回って入るが、果たしてどれほど時間を費やすことだろうか?ここは無難にプロの力をお借りした方が良いのでは?と考えた。とはいえ、いったい何処へ持ち込めば良いのかも見当がつかない。

 

再びネットで検索する。中には数多のGSで断られ、頼みの綱と持ち込んだオートバック◯でも断られたという記事があった。どうやらバイク専門店でないと受け入れてもらえないらしい。ところが頭に浮かぶ専門店という専門店は自宅からかなりの距離にある。そこまでどうやって運ぶかが問題だ。

 

試しに「バイク パンク 修理」に地元の地名を加え検索してみると、2km先にある自転車屋が浮上した。試しに電話をして訊いてみた。

「すみません。スーパーカブなんですが、パンクの修理って出来ます?」

「前輪かね?後輪かね」

「後輪です」

「一度、見てみるわね」

「じゃぁ、今から伺います」

 

原付きとはいえ、バイクを押しながらの2kmは想像以上に重く疲れた。上着を1枚脱ぎ、2枚脱ぎと体温調整を図りながらも、現地についた頃には汗だくとなっていた。

「すみません。先ほど電話した者ですが」

「あぁ、はいはい。ん?エンジンかけずに来たの?」

「え?どういう意味ですか?」

パンクしてるんだもん。乗れないんだからエンジンかけても仕方がないじゃん。

「エンジンかけて、スロットル回しながら少しずつバイクを走らせて、一緒に歩いてこれば重たないでしょう?」

「その手があったか!」

いつまで経っても素人臭さ丸出しだ。

 

年の頃は70もとうに過ぎ80にも差し掛かろうかといった年代だ。恐らくこの道、何十年という大ベテランだろう。作業をする背中越しに如何にもといった職人魂を感じ取ることが出来た。

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「慣れた人なら自分でやっちゃうんでしょうけどね」

「出来へん、出来へん。みんな出来ると思って動画見ながらやりよるけど、結局バラバラにバラして軽トラに積んで持ってくるわ(笑)こないだなんか、やっとる最中に怪我したとかで血ぃダラダラ流しながら持ち込んできたよ。怪我したらもう、やる気がなくなったと(笑)」

「血を流しながらですか…」

凄惨な光景を脳裏に浮かべながら淡々と手際よく続く作業を見ていた。洗濯機のドラムが回るのも飽きずに見ていられるが、こういった作業も釘付けになるほど見ていて面白い。

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一応、バイクショップでもあるようだ

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なんか色々と賞ももらっている。本当は凄い人なのかも知れない



結局、どういったわけかチューブの至るところに穴が空いていたらしく、修復をするよりも交換した方が早いということで、後輪を外しての交換となった。この領域ともなれば尚更、素人では手出しが出来ない。ついでにオイル交換もお願いし、お会計は〆て4,900円。

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料金相場は全くわからないが、速攻で直してもらえ心から感謝をする思いだ。

 

帰り際は夫婦そろって店先にまで出てこられお見送りまでしてくれた。ガギグゲゴ~と濁音だったエンジンも、カキクケコ~と新しいオイルに喜んでいる様子だった。

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