回らない寿司屋の定義とは?
魚を切り身でしか見たことのない子どもに海の絵を描かせたら、水の中に四角を沢山描いたと一時期、テレビ等でも話題になったが、さすがにサーロインが牧場に横たわる絵を描く子どもはいないだろう。それ以前に一般家庭の食卓にサーロインが並ぶこと自体が珍しいだろうし、大人ですらまともに絵にすることは難しいのではなかろうか。
それに同じく、回転寿司しか知らぬ子ども達は、まさか寿司が手で握られているものだなんて想像だにしないだろう、と勝手に想像しているのだが如何なものだろうか?余談だが、まだ二十代の頃、少々背伸びをして当時つき合っていた女性と岐阜ではそこそこ名の知れた寿司屋を訪れたことがあった。腕は確かなのだろうが、その寿司を握る手の甲が毛むくじゃらなのを見て食欲を無くしたと彼女が言っていたのをふと思い出した。
寿司職人は因果な職業だ。
ということで、次女の誕生日週間も最終日を迎えた昨日曜日、いわゆる「回らない寿司屋」に連れて行ってやった。ってゆーか、これが本来の寿司屋の形なわけで、回るとか回らないとかを付けること自体がおかしな話なのだが、話の便宜上そうさせていただくことにする。
とは言ってもパパの財務状況ではかつてのデートに使うほどには予算の捻出はできまへん。というわけで昨日の訪問先は、岐阜では最大級の寿司チェーン「初寿司」となった。
中でも柳津店は一貫140円(一人前280円)での提供なので、皿は無くともその場で合計金額が計算しやすい。
「どうだ、初めての回らない寿司は?」
「うん、美味しい。確かに回転寿司よりも魚が美味しいね」
「そうだろう、そうだろう」
「でも、値段が高いからそれも当たり前やね」
「ま、確かにそれは言えるけど…」
因みに注文方法は欲しいネタを紙に書いてオーダーするシステムが採用されている。
もう、お腹がいっぱいということで、会計を済ませ店を出た。お代は〆て6,030円(税別)也。ほぼ計算通りに回転寿司の3倍程度の料金となった。例え寿司の内容が変わったとしても、胃袋のキャパシティにそうそう変わりはない様だ。
「どうだった?初めてのちゃんとした寿司屋は?」
「うん、美味しかった。ありがとう」
「そう、そりゃ、よかった」
「でも、結局は注文して運ばれてくるのなら機械か人間かの違いで『魚べい』と一緒やね」
「おまえ、それを言っちゃぁ、おしめぇよ」
もう少し大きくなり、酒が嗜める様になったその時になって初めて本当の寿司屋の良さを知ることが出来るだろう。カウンターで隣に座るは彼氏か上司か、職種によってはお客ということも考えられる。恥をかかぬ為にも予行演習にはちゃんと付き合ってやらねば。
そして、バースデーケーキとは別に、可愛い系が好きな坊主の為に買ってあげたケーキだったが、可愛すぎて食べられないと言う。結局、自分が消化する事になった。