真性「Apple派」
「あー、おったおった~」
時刻は午前6時に差し掛かろうかとしている。市場にて名古屋発の荷物待ちをしていたら、遠くから赤ら顔をした男が自分を見つけ近付いてきた。酔っ払っているわけではない。彼の家業はうなぎ屋だ。そのうなぎ屋という職業の性質上、炭火を使ってうなぎを焼く。いわゆる「炭火灼け」と名付けられる日焼け症状を起こしているのだ。恐らく一生、元に戻ることは無いだろう。
「ほら、いいもん見せてあげる」
年齢は自分と同い年だが、お茶目で子どもっぽく全く人見知りをしない。ただ、現場に立つと寡黙な職人に変身するらしい。自分とは正反対だ。仕事では過剰なまでにリップサービスを提供する自分だが、話をすることも仕事として捉えている。よって、プライベートでは寡黙な方だ。一人でいる時間を特に愛する。
「おぉ~っ!出たっ!iPhone12。てゆーか、やめてよ。オレとお揃じゃん」
新色、ネイビーブルーのiPhoneだった。
「え~、ま~じ~?同じ色の買ったの?」
「うん、買ったけれどまだ梱包も解いてない」
実は予約開始と同時にappleのサイトから予約を入れた。そうしたところ、23日の金曜日午後2時39分に発送連絡があり、翌24日土曜日の15時28分にお届けの連絡が来た。
「なんで、なんで~。なんで使わんの?」
「いや、なんか調べたら、5Gの契約に切り替えなきゃならないって聞いたからさ、それを調べてからにしようと思ってさ。で、ショップに聞きに行ったのよ」
ネットで契約内容の変更をググりまくってみたのだが、どこをどう探しても全く見つからなかったので致し方なくショップまで足を運ぶこととなった。
「でさ、5G対応のSIMカードが必要なのかと思って店員に聞いたら…」
「うん、で?なんて?」
「アップルストアで買われたのですか?でしたら必要ないですよ。今、お使いの物をそのままお使い下さいだって」
要するに現状、使用しているiPhoneのSIMカードを抜き取り、そのまま装着するだけで良いのだと。
「でさ、キャリアでiPhone12を買った場合は、5G対応の契約をしなくちゃいけなくなるんだって。月々の基本料が高くなったんじゃない?」
「うん、2,000円くらい高くなった」
「オレにはそれが必要ないみたい。その代わり5Gは使えないらしいけれど、店員曰く、どっちみち使えるところなんて殆どないですから十分ですよ、だって」
ということで、お届けから5日を経過して、やっと開梱する気になった。
が、使用するのはまだ後のことにしよう。てゆうか、前機種のバックアップが全然作成できねぇでやんの。得意の放置プレイを楽しむことにする。
此方は仮性「Apple派」