氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

おい、バキュームカー。その場急務かー?

早朝仕事を終え、帰宅すると自宅前にバキュームカーが止まっていた。因みに足は愛車のスーパーカブ、通称「カブリエーラ」だ。

 

住まいがある地域は近くまで下水道が敷かれてはいるものの、自宅に引き込むのには個人が負担を強いられるということで、回りの殆どの家庭は浄化槽をそのまま使用している。よって我が家も浄化槽のままだ。

 

「あれ?今日、汲み取りの予定なんてあったっけ?」

なにも聞かされていないし、この手の交渉事は殆どが自分の仕事だ。近づいてみるとなんのこたぁない、向かいの家の汲み取りだった。向かいの家とはいえ「気を付け、前にならへ」で此方に見せているのは背中側、つまり裏側だ。裏側に汲み取り口があるので、こちらに止めた方が作業がし易いといった理由だろう。ただ、ただ言わせてもらいたい。目の前は公道ではない。我が家の私道となっている。私道に勝手に入り込んでの汲み取り作業とは由々しきことではないかい?

 

「あのね、ごめん。一応言っておくけどね、ここはうちの私道だから」

やはりひとこと言っておいた方が良いだろう。ということで言わせてもらった。

「あ?車出しますか?」

車庫の前に置かれているものだから車が出せない。

「や、今は出さないけどね、そんなことでなく、言っている意味わかる?」

「すみません。速やかに終わらせますので」

「わかればいいんだよ、わかれば」

と最後は心の中でつぶやいた。

 

自宅に入ると、表で話し声が聞こえる。するとパタパタと人がやってきて玄関のチャイムが鳴った。戸を開けると向かいの住民だ。

「ごめんなさい。迷惑おかけしてます。ちょっと詰まっちゃったもんで…」

「あぁ、そうですか。わかりました。大変ですね。大丈夫ですよ」

詰まっちゃったは聞きたくなかったが、ご近所関係に波風は立たせたくない。ひとつ恩を売っておいた。因みにお向かいは高齢者を理由に自治会から離脱している。いわゆる脱藩者ならぬ、脱班者だ。ただ謝りに来たのはそこの娘で一緒に暮らしている。ということは、本来、脱ける理由とはならないが、つまりそういった付き合いがきっと面倒なんだろう。

 

しかし、その後がまいった。自宅の中は芳しい香りで充満している。ちょうどお昼時に差し掛かろうかといった時刻だったが、当然、食欲などわかず。おまけに外には洗濯物まで干してある。それに、香りの向こうに先ほど謝りに来た娘の顔がオーバーラップし余計にいたたまれなくなった。大きな声ではいえないが、かなり横幅がある五十路の行かず後家だ。

 

車で行きたいところもあったが、車庫が塞がれ車が出せない。致し方なく走りに出ることにした。稲刈りの時季、抜けるような秋の青空の下、そこかしこで優雅に刈られる稲を拝みながらのランは実に爽快で、先ほどのことなど微塵も頭に過ることはなかったが、だけど…、涙がでちゃう、花粉症なんだもん。

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そう、例によって例のごとく、毎年恒例、秋の花粉に悩まされる時季もついでにやって来た。

 

おまけ

 

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