氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

儚い甘さの『栗粉餅』は消費期限も実に儚い@「天狗堂」

その時は突然やって来た。ってゆーか、毎日の行動そのものがほぼほぼ衝動に駆られてのことなので、何かに付け突然やって来ることが圧倒的に多いの。逆にいえば計画するのが苦手だということ。

 

で、何が突然かというと、先日『栗粉餅』を買いそびれた例の「天狗堂」のことだ。早朝の仕事を終え、帰宅しようと大雨の中を北上すると岐阜中警察署が目に入った。その瞬間、並んでも買えなかった『栗粉餅』のことがフラッシュバックしたのだった。

 

こんな雨の中、まさか行列など出来ていよう筈がない。なにせ、ライバルと言えるのは全て年寄りだ。雨に濡れるリスクまで犯してまでして絶対に『栗粉餅』を食べたいだなんて思わないだろう、と勝手に判断した。

 

そこで信号のある警察署手前の交差点を時速180kmでドリフト気味に左折し、そこから正面に見える「天狗堂」にパワースライドで横付けした。

 

しめしめ…

案の定、行列は出来ていない。

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窓から店を覗くと、熟と完熟、加えて超熟の女性3名が慌ただしく仕事をしていた。ひとりは電話のやり取りをしている。ただ正面に備え付けてあるショーケースを隅々まで見渡すも、肝心の『栗粉餅』の姿はそこになかった。恐る恐る尋ねてみる。『栗粉餅』の所在や如何に。

 

「あの~、すみません。『栗粉餅』はないですか?」

小気味良いテナーボイスが、狭い店内にあたかもBGMがごとく穏やかに響く。それに応ずるかの様にインプロビゼーションされた言葉が岐阜弁で返る。

 

「まだ、出来てへんのやわ。ただ、今の電話もそうやったけど、今日は予約が沢山入っとるもんであるかどうかまだちょっとわからへんのやけど…」

「えっ?予約が必要なんですか?」

「う~ん、ちょっとこの時季はねぇ」

そうか。またしても断念せざるを得ないのか、と諦めかけた瞬間、厨房からひょいと顔を出した女性が自分に向かって声を掛けてきた。

「何個要ります?」

「えっ?10個?いや5個?あ、3個もあればいいです」

「3個なら大丈夫。少々お待ちくださいね」

と言い再び厨房に姿を消した。おぉ~っ!なんという幸運。ジョージ・クルーニー似がこれほど功を奏すとはやはり人間、見た目の重要性が9割とはよく言ったもんだ。誰が言ったかは定かではないが。

 

行きつけの飲み屋の熟女将が「まぜご飯のおにぎりも美味しいよ」と教えてくれたので、ついでにショーケースの中にあったそれも一つ購入。

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〆てトータル780円のお買い物となった。念願の『栗粉餅』が手に入り至極ご満悦の体で帰宅すると、貪る様にして胃の腑へ落とした。

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甘さ儚くも肉厚な栗粉に包まれた上品な味わいは、秋の風情を感じるにあまりある逸品だった。

 

てゆーか、『栗粉餅』っててっきり全国区だと思っていたのが、古くから岐阜在住でも知らない人がいたという事実をつい先日、知らされることとなった。読み方すらもわからないと言われたので改めて平仮名で翻訳すると『くりこもち』となる。以後、お見知りおきを。

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