氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

やはりそう来たか~

「お父さん、防具買って」

「え、要るの?学校にあるのを借りれば良かったんじゃないの?」

「でもね、結局なんだかんだとみんな買っとるんやて」

「なんだかんだとは?」

「サイズが合わないとか、人が使った奴は嫌だとか。特に女子はね」

「特に女子はか…」

 

確かに剣道に限ったことではないのかも知れない。原付を買うに当たってヘルメットを入手しようとヤフオクのサイトを検索していたら、元バイカーのスタッフに、

「中古はやめましょうよ。誰が被ったかわからない様なヘルメットなんて気持ち悪いじゃないですか」

と、そう言われてしまった。

「でも、洗浄済みとか書いてあるぞ」

「いや、そういう問題じゃなく」

 

自分は無神経なのか、彼が神経質過ぎるのかはわからないが、男子でもそう思うということは女子ならば尚更なことなのだろうか。まぁ、女子でも気にしない奴は気にしないとは思うのだが…。

 

「買ってないの同級生では私ともう一人だけなんやて」

真実はわからぬまでも、レンタルに頼る先輩は一人もいないらしい。ということは、いつかは買わねばならない時が来るのだろうとは思っていたのだが思いの外、それが早く訪れることになった。やっと涼しくなり、いよいよ防具を付けた練習が始まるというのがその理由だ。もはや観念するしか無さそうだ。

 

「そういえば、先輩の家、直ぐそこのアパートなんやって。で、一緒に帰ってきた」

「部活の先輩?」

「うん、そう」

「へぇ~、女の先輩?」

「ううん、男の先輩」

「なに?マジで?やるな、この。ヒューヒュー!」

「なにがヒューヒューやて。全然、そんなんじゃないし」

「またまた~。ヒューヒュー!」

「ブッサイクやし」

その一言で片付けたらあまりにも先輩が可哀想だろ。

 

「会話あるの?」

「あるよ。2+9はなぁ~んだ?答えは肉でしたー、とか」

「・・・」

 

たぶん、優しい先輩なんだろうな。ひょっとしたら小さな子が好きだったりするのかも知れない。で、間違いなく面倒見がよい先輩だと思う。長い目で娘のことを見守ってくれたらと願う。

 

というわけで防具の為に少々、切り詰めます。飲まないという選択肢はないのかと尋ねられたとしても、死にでもしない限りそれはない。

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