氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

「サバの押寿司」はかく語りき

単純に間違いと片付けるのは簡単だ。余程、近くのスタッフをつかまえて尋ねてみようかとも思ったが、いや、待てよ、ひょっとしたら何か思惑があったのかも知れない。ここはスタッフの気持ちになり考察してみようと考えたわけだ。

 

深夜の西友でのことだ。値引きシールを待つ人々のことを正式には「シールハンター」というらしいが、そもそも正式ってなんじゃらほい。自分としては「シールハンター」よりも友人が提唱した「半額ゾンビ」、若しくは「値引きゾンビ」の方がしっくりくるので今後はこちらを使わせて頂く。

 

恐らく21時頃がゾンビ出没の目安かと思う。自分が入店したときには、既にゾンビの姿は見受けられず売り場を見てもシールが貼られた商品はほんの僅かしか残っていない。根こそぎゾンビに掻っ攫われたか、荒涼たる風景が冷蔵ショーケースの中に広がっていた。

 

その中でポツンとひとつだけ、たったひとつだけ指名を待ちわびる姿が実に寂しげなパックが残っていた。「サバの押寿司」3貫入りだ。背の青い魚は大好物だ。煮ても焼いても、もちろん生でもあらゆる魚の中で一番好きと断じて言える。いや、むしろ愛していると言っても過言はない、が布団を共にしようとまでは思わない。付かず離れずの微妙な関係が長持ちの秘訣だ。

 

いつもだったら秒速で買い物かごへインするところだが、ふと青魚好きにだけが感じることが出来る違和感が脳天を貫いた。

 

「これ、値下げと見せかけた値上げとちゃうか~?」

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なぜ、こんなことになってしまったのだろう。冒頭に戻る。間違いと片付けるのは簡単だ。だが、ひょっとしたら、ひょっとして、これは意図的に操作されたことかも知れないと考えてみよう。それに気が付くお客がどれだけいるのだろうか?気づいたところでどういったリアクションを示すだろうか?といった検証が店側によって行われている可能性も捨て切れたものではない。柱の影からスタッフが此方を見ていないか周りをキョロキョロと伺ってみたが、どうやら取り越し苦労な様だ。

 

また別の考えとして、このコロナ禍による不況により落ちた業績をこういった形で少しずつ立て直していこうとする新種の作戦なのかも知れない。もしそうだとしたら、その努力は認めるものの、多分、そのうちお縄にかかることにならへんかしゃん?

 

様々な状況を考えては否定して、そしてまた考えたところで、遂に正答にたどり着くことは残念ながら叶わなかった。自分の非力を悔やむとともに恥じ入るばかりだ。

 

結果、一度、手に取ってはみたものの、元あった場所にそーっと戻しその場を立ち去った。

 

「よいお客さんに買ってもらうんだよ」

そう言い残すと背中で風を切り店を後にしたのだった。

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