スピードを手に入れねばいつかやばい事になる
アルバイトの給与計算をしながら、Amazonプライムミュージックで先日亡くなった映画音楽界の巨匠、エンニオ・モリコーネが手がけた数々の映画音楽を聴いていた。代表曲といえばやはり「ニューシネマパラダイス」のテーマソングだろう。近年観た映画の中では、これほどまでに涙腺を崩壊させてくれた映画はなかった。ディフェンディングチャンピオンは「ジョーイ」だろうか。
曲が「ニューシネマパラダイス」の愛のテーマに差し掛かる。いかん、早くも涙腺が緩んできた。と、同時に猛烈な尿意に見舞われる。緩むといった点に於いては上下ともに身体を侵食し、自由が奪われるのは五十路の特徴ともいえる。暫し沈思黙考す。ここはどちらの「漏れ」を覚悟すべきだろうか。考えるまでもない。慌ててトイレへと駆け込んだ。と、誰にでもこの様な経験はあるだろう。いや、あるに決まっている。
※以下、グロ危険
頭を北とするならば、膀胱より南西に位置する右足大腿部に出来た血腫だが、更に容量を増やしダチョウの卵大だったものがラグビーボールかと思われる大きさにまで膨張し、ここからエイリアンでも生まれるのではと危惧するほどまでの大きさになってしまった。もはやここまで来ると如何にスリムなパンツで押さえ込もうとも隠しようがない。というか、そんなパンツは締付けが痛くてとてもじゃないが履けない。
「う~ん、様子を見ようかとも思いましたが、やっぱり抜きましょうか。で、効果が確実に出るとは限りませんが、ステロイドを投与してどれくらい炎症が治まるか見てみましょう」
見るに見かねたのだろう。結局、注射針をぶっ刺して中の血液をチュウチュウと抜くことになった。これが注射器でなく、檀れいの直吸いだったらどれほど太ももが喜ぶことだろう。五十路代表として石田ゆり子も可。
余談だが、「五十路 女優」で検索するとエロサイトが上位独占するのは自分のブラウザだけだろうか?あやうく寄り道しそうになった。ネットサーフィンの罠がそこかしこに仕掛けられている。
膝部分の痛みも相変わらずだ。いや、以前にもまして痛みが酷くなっている様な気がする。
「ちょっとリハビリもしてみましょうか」
ということで、なにやら最新兵器の紹介を受けた。痛みは痛みをもって制す、かどうかはわからないが、なんかそんなマシンらしい。かの大リーガー、大谷翔平も治療に使っていたということだ。名は「ショックマスター(圧力波治療機)」という。
「一番痛いところにですね、痛みが更に伴う刺激を与えるんですよ。不思議なことにこれをやると治りが早いんです」
だそうだ。いわば「傷口に塩を塗る」作戦といったところだろうか。
「いたたたたたたたた!」
五十有余年の人生において、これほど「た」を連呼したことがあっただろうか、いやない。そりゃ、そうだ。一番痛い箇所を1秒の間に何十回と先の尖った細い棒でつつかれるんだもん。実際、効果があるのかどうかはまだわからぬまでも、藁にもすがる思いで治療に専念することとしよう。
だってトイレに駆け込むにもスピードに差が出るんだもん。