氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

『HOTTER THAN HELL』とは言え見たことがない地獄

「なにか温かいものが食べたい」

と自分が言うと、異口同音

「俺も」「私も」と返事があった。

 

話は日曜日に遡る。珍しく4人の息が合ったとしても、何がいい?まで進んだところで話が頓挫する。キーワードは「温かい」で一致しようとも皆の頭の中には何もない。

 

「じゃ、俺が決める」

と車に置きっぱなしにしてあったランチの割引券を取り出す。比較的、自宅の近所にあるインドカレー屋(店名は忘れた)の物だ。前回、家族で利用したときに頂いた。

 

皆に反対意見はない。なにせ、財布は自分だ。反対しようとも聞く耳を持たないことを既に奴らは知っている。

 

駐車場に到着。車が1台しかとまっていない。

「電気、点いてないよ」

車はあるが人の気配がない。駐車場に入るときは気がつかなかったが、入口に「テナント募集」と不動産屋の名前が入った看板が立っている。

「えっ!潰れた?」

前回、利用してからひと月も経っていないはずだ。

「美味しかったし、けっこう流行ってたのになんで?」

坊主も残念そうだ。仕方がない。場所を変えることにした、というか、変えざるを得ない。

 

そこで、かつて1度だけ利用したことがある、カルビ丼とスン豆腐専門店 「韓丼」を訪ねた。う~ん、心なしか昼の真っ只中だというのに車が少ない。ガラス越しに覗くと中も閑散としている。考えたくもないが、やはり例のアレが影響しているのだろうか。

 

ガラス戸にメニューが貼り付けてある。予め食べるものを選んでから入店した方がスマートだと考えた。各自、メニューとにらめっこをしている。

 

「『はらみ』ってなに?」

誰しもが数多く耳にしたことのある部位かとは思うのだが、実際に答えられる者はそうそう居ないだろう。『カルビ』然り。言葉としては知っていたとて、どれだけの者がまともに答えることが出来ようか。

 

「横隔膜ってわかるか?痙攣するとしゃっくりが出るところがそこ」

「カルビは?」

「腹周りの肉。こっちは脂がのってる」

かなりザックリかとは思うが概ねそんなところだろう。ただ、はらみは厳密にいえば「内蔵」に分類されるので、例え元が銘柄牛のものであれその名を冠してはいけないと聞いたことがある。

 

「じゃ、俺『うえはらみ』でいいわ」

「なに?なんて言った?」

うえはらみ

『うえ』?(爆)『うえ』じゃねぇよ。

『じょう』『じょう』

 

と、矢吹丈並みのトリプルカウンターを食らわされKOしたところで入店。

 

灼熱の『ホルモンスン豆腐(ドゥブ』は冷めた身体を温めるには充分過ぎるほど「ホッター・ザン・ヘル」by「Kiss」なお味だった。

 

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上はらみ丼

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カルビ丼


『カルビ丼』を頼んだお姉ちゃん、いつもの食癖は健在。先にトッピングを平らげてから白飯を心ゆくまで堪能する。吉野家の牛丼然り。

「わたしは白いご飯が好きなの」

と言い切る彼女。食の楽しみは人それぞれ故、口を挟むのは無粋といったところだろうか。

 

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