氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

「ねぇ~、誰かいい人紹介して」

「ねぇ~、誰かいい人紹介して」

と美貌≦愛嬌の五十路熟女にいきなりお願いされた。バツイチ、3人の子持ち。但し、3人とも二十歳をとうに超えている。

 

いい人と言われてもその解釈は様々で、顔がいい人から顔は悪いが頭がいい人、スタイルがいい人や性格がいい人に収入がいい人、腕がいい人に付随してなにのテクニックがすっ~ごぉ~くいい♡人など多岐にわたる。

 

「え~とねぇ、年上で高収入の人がいい」と図々しいにも程がある。とはいえ年齢はともかくお相手に収入を望むのは至極当たり前のことだろう。

「既婚者でもいいわけ?」

「いいわけないがね」

冗談な依頼かと思っていたら意外とマジメなお話らしい。

 

以前、婚活パーティー帰りと思われる30代前半の女子の会話がラジオで話題になっていた。

「今日も普通の人いなかったよね~」

「うん、いなかったぁ~」

「私たちそれほど高望みしているわけでもないのにね」

「ほんとほんと。本当に普通の人でいいのに」

ついでに結婚相談所に於いて、女性会員が結婚相手に望む条件をお披露目していた。

 

「どの様な方がご希望ですか?」

「普通の人でいいんです。大卒で30代。年収は最低600万に身長は170cm以上。優しくて尊敬出来る人がいいです」

と概ねこの様な要望であったかと。

 

統計によると、50歳未満の夫婦は約95%が35歳までに出会っているのだと。逆に言えば35歳までに出会いがなければ極論として結婚できないと言ってしまえることになる。自分に準えてみよう。結婚をしたのは32の時だ。その時の状況はといえば、彼女たちが言うようないわゆる普通の人の定義には到底足元にも及ばずで、とならばうちの嫁はババを引いてしまったと言うことになる。

 

ただ、

「お宅の旦那さんは子煩悩で子どもの面倒をちゃんと見るしマジメにお勤めされているし羨ましいわ」

などと至極当たり前の事を自らも知るママ友に言われたりした時に

「そんなことないって。うちなんか普通やって」

と返されると、〝普通で悪かったな〟などと憤慨していたが、意外と褒められているのかも知れれない。ただ客観的に見て、舅姑ともに無し、30代前半にして持ち家あり、但し県庁所在地とは名ばかりの田舎であることを除いたとしてもこれだけの条件ならば十分なアドバンテージでなかったかと自ら思う。もっと上手に活かすべきだった。

 

結論から言うと、明らかに女よりも男の方が早死する昨今、男やもめを求めるのは非常に難しいことだし、男やもめに蛆がわき女やもめに花が咲く、とも言われる様に、もし条件見合う男がいたとしても蛆がわいていては話にもならない。それに恋愛経験が乏しい人を相手にするというのも彼女にとって恐らく望むところではないだろう。海千山千の彼女だから尚更のことである。

 

ただ人口的に見ると65歳以上の男子が8.3人にひとりといわれているなか、年齢的な隔たりに妥協をするならばその辺りにより条件に合う相手が潜んでいるやも知れないし、この際、女やもめとして花をさかせるのも選択肢のひとつだろう。なにはともあれ、ただただ頑張れ!とエールを送らせて頂きたく思う。