氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

最終、且つ最強奥義

今年の春から習い出した合気道もかれこれ4ヶ月となる。我が家の次女の話だ。「格闘技がやりたい」と唐突に言い出したのを受け、きっと父親に倣ってのことだろうと理由は聞かず教えてやることにした。

「おれも引退したとはいえ、曲りなりにも格闘技をかじった身だ。では一肌脱いでやろう」と、ただその時はそう思ったものの、いざその段になると
「やっぱめんどくせぇ〜」
自分の性格からして続くわけがない。

「で、なんで急に格闘技がやりたいなんて言い出した?」
ここで初めて質問が出る。例えば自分の場合。主たる目的は小1の坊主に空手を習わせることだったのだが、見学を重ねるうちにミイラ取りがミイラになったわけだ。
「自分もやらせてもらっていいですか?」

かつてはブルースリーに憧れ髪型を真似、自家製ヌンチャクなども振り回したものだ。それが目前で顔面の殴り合いなどを見せつけられた暁にゃ、居ても立っても居られなくなってしまったというわけだ。ただ、齢も50を超えると骨の脆さを痛感することとなる。数えられるだけで13箇所は骨を折った。

で、次女である。
「だってさ、あん子がああやん。お兄ちゃんでは頼りにならんし私が守ったらな将来、誰も守ってくれへんやろ?」
「え、その為に…?」
普段、喧嘩ばかりしているのに、多少上から目線ではあるが障がいのある姉をそこまで気遣ってくれていたのには親として面目ない思いをしつつもその優しさに目頭が熱くなった。

合気道は様々な格闘技をYouTubeで観た挙句、通える道場が近くにあり、且つ現実的に戦力として有用なものと思い選んだのだが、今はまだ格闘技本来の術技の厳しさや辛さよりも友達と『仲良くする』ことを教えられているようだ。遅れて入ったのにも関わらず同級生や年端もいかぬちびっ子にも「お姉ちゃんお姉ちゃん」と慕われ如何にも楽しそうにしている。『仲良くする』ことが格闘技に限らず最強の奥義であると知る

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