氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

もはや公用語でいいじゃない日本語@ツルシ名鉄岐阜駅前店

お盆の一日くらいは羽目外しちゃろかと昼酒に興じてみた。当初は岐阜駅構内でもと歩を進め、「サイゼリヤ」か「昭和食堂」を目指そうと考えていたのだが、道中「ビールセット690円」と書かれた看板が目に入った。場所は新岐阜、店名は「ツルシ」。インド料理の店だ。

因みに自分は「新岐阜」と聞いて凡その範囲を知る人間だ。名称は今の「名鉄岐阜駅」がかつて「新岐阜駅」と名乗っていたことに由来するのだが、確かに国鉄当時の岐阜駅よりは近隣にデパートや百貨店などが点在し「新」にふさわしく街にも活気があった様な気がする。岐阜市のファッションのメッカ「ハトヤ」には中学生当時から足繁く通った思い出がある。だがそこにダイエーがあったことを知る人は多いが、ジャスコがあったことを知る人は少ない。

話を戻す。「690円」という字面の良さに躊躇うことなく足を踏み入れると、「いらったいまてー」と滑舌は悪いが愛想の良い挨拶で出迎えられた。テーブルに案内され、卓上のメニューを片っ端からチェックする。が、しかし、お目当てのビールセットなる文字が刻印されたメニューが見当たらない。

「すみません。ビールセットのメニューはないですか?」言葉が通じればいいな、と内心おどおどしながら訊ねてみると、「あるよ、カモン」と結局、外の看板まで連れ出された。いつも思うけれど、あの方々って愛想は何気に良さそうなんだけど、いつも目が笑ってないんだよね。それだけクソ真面目ということなのだろうか。

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「チキンパコダ」をオーダーしたのは見た目が唐揚げに近く失敗が少なそうだったという、チキンな理由から。おいおい、チキンがチキンを喰うなんざ笑い話にもならねぇぞ、などとぶつぶつとつぶやきながら食していると、「いらったいまてー」と新規客を出迎える挨拶が聞こえた。

明らかに中国人だ。女性二人組である。中国語で相談を交わしながらメニューを選んでいるのがよくわかる。それもそのはず、目の前の席だからいやが上にも目に入ってくる。「すみません」と日本語で店員を呼ぶと、インド人だかネパール人の店員が「はい」と答える。その頃にはビールもジョッキの底をついていたので、夏の暑さとアルコールの所為で詳しくは覚えていないものの、全て日本語でやりとりされていた。

おぉ!日本語はもはや公用語じゃんね!などと一人で感動し気分がよくなったところでお代わりを注文。1杯で止めておくつもりだったのがあまりもの嬉しい出来事に元々欠落した意志の強さが更なる崩壊を見せた。ただし既につまみがなくなったので添え物のケチャップを舐め舐め…。

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「ご馳走さまでした」レジ横にPayPayのQRコードが掲げてあったので、ヘビーユーザーの自分は当然それで払おうとしたところ、「おうっ!PayPay!!」と大声でなぜか満面の笑みを返されたのには腰が抜けそうになった。キャッシュレス先進国出身だけに故郷への郷愁を呼び覚ましたか?いや、きっとそうに違いない、と酔った勢いでわけもわからず理解してあげたのだった。

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