氷の上のさかな

氷の上にディスプレイされたさかなの様にセカンドライフをキラキラとさせる為に今を頑張ろうといったシュールなお話。

暦の上では秋@種々・夏の思い出

夏は終わったと宣言する。一応言っておくが甲子園での球児のつぶやきではない。読んで字のごとく夏という季節が終わったということだ。

実感にはまだ早い。ただ自らの四肢が体感として終わったとそう告げた。多少の希望的観測があったとしてもだ。もっとも暦の上ではとっくの昔に終わってしまっているので大騒ぎするほどのことでもない。

ただ夏の終焉=娘達の夏休みが終わってしまうと考えると少々焦りを感じ始める。夏の思い出を提供するのが親の務めと毎年考えているからだ。特にお姉ちゃんは小学生として最後の夏休みだ。

思い起こせば4年前、坊主がまだ小6の時には行き先も宿をも決めずの男2人旅を敢行した。初日は諏訪湖のサービスエリアで温泉に浸かりその晩は中央自動車道でもっとも標高が高い天然エアコンが売りの道原パーキングエリアで車中泊。翌朝となり被災地を見たいというとっさの思いつき、しかも漠然とした坊主の願いを叶えてやろうと仙台まで車を走らせる。距離にして500km近い道程だ。後先のことは考えない。がそこで、「考えない」という考えの甘さが露呈した。時はお盆の真只中。おまけにあろうことかサッカーの日本代表戦がその晩に仙台で開催されるという悲劇が重なる。
「ない!ない、ない!宿がない!」

500kmとはいえお盆の最中(さなか)、大渋滞の500kmだ。運転で疲れ果てた体、それに下界の暑さ、車中での連泊はさぞかし悲惨なこととなるであろうがその様な理由はおかまいなしと覚悟を余儀なくされた。と、そこへ空きが出たら教えてくれと打診しておいたホテルからセミダブルベッドの部屋ならば、と連絡があった。男同士とはいえそこは親子である。当然断る理由などない。むしろ幸運な連絡にペコペコと頭を下げる思いでその晩は死んだ様に熟睡した。

翌日は日本三景のひとつ「松島」をフェリーで巡り、その後は津波で壊滅した名取市にある赤貝の特産地として有名な閖上地区へ。震災の爪痕が色濃く残る風景に絶句させられた。しばしの間無口なまま進路を南にとりその晩は東京で一泊。前夜の失敗から二の轍を踏まぬと今回はホテルを予約しておいた。夕食はお上り気分を味あわせてやろうと六本木に足を運んだもののホテルへ戻る地下鉄の中で鼻血ブー!本人は緊張したせいだと言ってはいたがお上りならぬおノボせになってしまったらしい。思い出としては十分だろう。

さて、娘達である。以前、旅好きのスタッフから『中部「道の駅」スタンプブック』なるものを頂戴した。道の駅を巡りスタンプを押して記念とするガイドブックの類いのものだ。純粋に小学生が喜んでくれそうな企画ではないか。そこで国道156号線で最初の道の駅「美濃にわか茶屋」にてもう一冊購入。1冊ずつを娘達にあてがいそこを起点とし北上することにした。

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ひるがの高原で昔の同僚がロハスなカフェを営んでいる。後で知ったのだがかれこれ20年ばかり会ってなかったらしい。当時19の彼が40を迎えるという。ついでだからと久しぶりに顔を見てやろうとそれもひとつの目的として会いに行った、のだが残念ながら不在。「ダイナランドゆり園」にて出張販売に出ているという。

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夏のダイナランドは行ったことがない。ダイナランド自体、二十代の頃に職場の同僚とお客で来ていた眼鏡が似合う眼鏡女子、偶然にもその眼鏡女子と仲がよい高校時代の後輩にあたる女子と4人でスキーをしに行ったきりだ。取り敢えず娘達が喜ぶかどうかよりもこちらの都合を優先させて初となる「ダイナランドゆり園」へと向かった。

蓋を開ければ案ずることもない。広大な敷地に咲き誇る無数のゆりを前にして娘達もこの時ばかりは団子よりも花よ、と見惚れていた。リフトに乗りゆりを眼下に眺めながら山の中腹へと向かう。リフト上でも終始騒ぎっ放しだ。揺らしすぎてリフトを止められはせぬかとハラハラしていた。

カフェの出張所はリフト終点から若干下山したところにあった。久しぶりの顔もそこにあり遠くから手を振り迎えてくれた。髭面にむさくるしさが増した感はあったがそれも微妙なところ、一目でわかるほどに変わりはなかった。タイトルは忘れたがコーヒー味のかき氷が絶品。娘達も絶賛していたが確かに美味かった。機会があったら是非寄ってあげて欲しい。但しかき氷はその1品目しかないので選択の余地は欠片もない。

 

帰路は洞戸を経由し八箇所目となる道の駅へ立ち寄りその日の最後とした。走行距離約250㎞。宮城へのそれには遠く及ばないがきっと満足してくれたことだろう。

「お父さん、スタンプブックまだ真っ白やでね」
ただ更なる期待感を抱かせてしまった様だ。ひょっとしたら自分で自分の首を絞めてしまったのかも知れない…。