障害宣告
翌日、家内と二人で院を訪れた。実は長男が生まれる前に死産を二回経験している。一度目は妊娠と気づかずトイレで産み落とし、二度目は妊娠にこぎ着けたものの子宮の中で息絶えてしまった。二度目などは堕胎手術の日程が、自らが店長を勤める店舗の開店日と重なってしまうという、忘れることが出来ない悲喜交々な日となった。
「母体の何らかの異常による障害やな。うちでは対処出来んから県病院(岐阜県立病院、今は岐阜県総合医療センター)行ってもらおか」
二度目の流産を経験してから、藁にもすがる思いで、不妊治療で有名なこの産婦人科に通うこととなった。が、幾度にも及ぶ治療虚しく、結局子を授かることがなかったのだが、よく言われる話、諦めた途端に長男を宿すことが出来た。その時点で信頼性は失われていた話なのだが、慣れたところが良いといった理由で引き続き家内がそうしたわけだ。
未だカプセルからは出られない。酸素が十分に体に行き届かない、難しく言えば酸素飽和度が満たない状況らしい。早速手配がされ、完全看護の大きな病院に救急車で運ばれて行った。同乗出来ないといった理由で二人してその場は見送ることしか出来なかった。そもそも家内はまだ退院が出来ていない。
「赤ちゃんがいないのにまだここに居なくちゃいけないなんて。私が悪いの?障害は私のせいなの?」
泣き通しの家内をなぐさめる言葉も見つからなかった。それでも仕事には行かなくてはない。